「高橋克彦の怪談」

 「高橋克彦の怪談」を読み終わった。高橋克彦の怪談系短編を今まで出版された本から抜き出して並べているもので、高橋克彦氏の作品を全て読んでいる人にとっては読む必要が無いかもしれない。私もこの中の短編で知っているものがあった。読んだのが随分前だったので記憶が薄く、タイトルも変更されていたために、驚いてしまった。何が驚いたかと言うと、この短編集の中の何篇かは、記憶があるのだが思い出せないとか、知らないはずなのに知っているというところを奇怪に書いているからだ。自分もそんな体験をしているのではないかと思ってしまったのだが、何のことは無い、以前に読んだ本に収録されていたということが、巻末の解説に書いてあって安心した。
 この短編集はエッセーが含まれている。バラエティーを主眼に作品を収録したとの事で、確かに怖いのから怖くないのまでいろいろと取り揃えている。ただ、何となく他の目的と言うか意図も感じる。それは、この作品群が何処までが本当で何処までが作り物か、いろんな意味でカモフラージュされるセレクションなんじゃないか、ということだ。
 エッセー作品が創作作品に負けず劣らず奇怪な内容で、知らなければどれがエッセーだかわかりにくい。エッセー風作品とも思えたりする。中ほどにあるエッセー「ホラー小説を書くために」の中で、しんがりに収録された「大好きな姉」という作品に少しだけ触れられていたり、水と黄昏が怖いという話題が何度も繰り返し出てきたり、一人称の作品がエッセーの間に挟まれていたり。
 最後の解説にはいいわけのように、高橋克彦が怪奇現象に出会う確立が多い作家だと書かれている。身近に起こる可能性があるからこそ、ホラーが怖いんだと思うが、この短編の集め方はまさにそれを狙っているのかもしれない。だとしたら後味の悪さは狙い通りだと思う。

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