読書、本:「小説の解剖学」


 「小説の解剖学」を読み終わった。概ね面白かったのですが、最後まで読んでショックだった事が一点ありました。この作者は小説を書いたことがないそうです。私はてっきり、小説家が書いた小説指南書だとばかり思っていました。学習院大学フランス文学科教授だそうです。
 内容は作者が創作学校(http://www.cwsnet.co.jp/)で教えている講義内容をまとめたものだそうで、第二講が生徒との掛け合いになっています(生徒はほとんど発言しませんが)。この本は単行本「小説家になる!」というタイトルで出版されたものを文庫化したときにタイトルを変更したそうですが、その単行本の後書きに「ぼくは小説を書いたことはない。これから書きたいとも思っていない。なぜなら、世の中には面白い小説が無限にあって、それを読むことのほうがずっと楽しいだろうからだ。自分で小説を書く暇があったら、すこしでも多くの本を読みたいと思っているのだ」と書かれていました。ということはつまり、自分が読みたい本を書く小説家を自分で創り出せる立場にいるわけで、羨ましい限りです。
 それはさておき、具体的な内容ですが、様々な世界中の小説を引用して文章の技術や構成の技術やそれらがもたらす効果を説明し、それを応用、発展させる方法を丹念に紹介しています。章立てもわかりやすく専門用語もほとんど文中で解説してあるので、すんなり読めるようになっています。フランス文学を教えているだけあってフランス語の専門用語がそれなりにあること、文学的な内容が多いことが気になるといえば気になります。また、自身で小説を書いたことがない事に由来すると思うのですが、説明の裏づけとして有名作家の評価が引用され、自分の意見と言うよりは一般論的な方向へ持っていこうとしているような雰囲気を感じました。
 読書経験は豊富だそうで、その経験から来るのだと思うのですが、「だめです」とか「やってはいけません」とか「天才だからこそできるのであって」など独善的な部分が読者を選ぶのかなと思いました。まあ、この程度の断定で意気消沈していては小説家にはなれないということでしょう。
 小説家になりたい人が、初めての小説の解説書として読むのはおすすめできませんが、文学という学問を勉強したことのない私には面白い一冊でした。

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