「動物園の鳥」

 「動物園の鳥」を読み終わった。面白かった、と思う。アマゾンのカスタマーレビューに結構厳しい事が書かれているけど、頷ける部分もある。内容がお粗末というメッセージには疑問を感じる。言うほどつまらなくもないし、中身がないわけでもない、と感じた。
 内容は動物園で起こる小さな事件を解決する話だ。ここにでてくる動物園とは「東京都の動物園&水族館・恩賜上野動物園(http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/zoo/ueno/)」の事であり、後書きで作者もモデルとして使ったと書いてある。が、モデルとして使ったというか、そのまんまだったのがきもちわるい気がした。ペンギンの檻の前が事務所というくだりで場所の特定ができてしまったので出だしから動物園に関してもやもやとした割り切れぬものを抱えながら読んだ。動物園の名前を出しても良かったろうに。その方が臨場感があっただろうに。
 後半が特にそうなのだが、性格の理由付けが三段論法的でいまいち納得が行かない部分だった。それだけの理由でそんな性格になるのか?とか、その理由がその性格付けに関わってくるのが良くわからない、という疑問が随分あった。もしかしたら作者の身近な実例があるのかもしれない。が、実際にそういう人が居るからと言う理由で、強引な説明で纏め上げてしまっているのだとしたら、何だかもったいない。
 終章は要らないんじゃないかと思った。どんな内容であったかに関わらず、最後から二番目の「第十二章」は良かった。だからここで終わらせても全く問題ない作品だと思う。余韻の残し方の問題として、十二章までと終章とでどれほど違うものかと言うところを比較してみると面白いとは思ったが、カタルシス的には、それほど大きな違いはないのではないかと思う。
 あ、あと、探偵役の鳥井が第一章で頭脳を発揮しすぎな感があった。後半の推理に驚きが少なくなってしまったように思った。鳥井の持ち味も何処となく発揮されないで話が続いていくのがもったいないと思いながら読んでいました。
 現地調査しているようなので、見逃したのかワザと書かなかったのかわかりませんが、動物を飼育できなくなって捨ててしまうという話のくだりで、ミドリガメが出てきました。ミドリガメにも3種類いるとか書き漏らしているところがあるのは放置したとしても、動物園に隣接している不忍池には大量の亀がいてこれが実は外来種らしい。このネタを使わずにスルーするなんて、なんてもったいない!!どうせ動物園名を出さないなら、でっち上げてでもそんなネタを突っ込んで欲しかったなぁ、と思いました。
 いろいろと文句も書きましたが、前二作「青空の卵」と「仔羊の巣」を読んだ方は、読んでみるのがよろしいかと思います。


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